序章

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血が…血が………!     溢れるように流れ出して、止まる気配を見せない     目をそらすように、母親の顔に意識を戻すと、心配させまいとか、母親は自分に向かって微笑む     その笑顔の裏に秘められた辛さに耐えかね、自分は叫んでいた     「母さん!!!」     そうして叫ぶと同時に目を覚まし、ベッド勢い良く起き上がっていた     息を整え、周りを見渡す   先ほどの場所とは違う、自分の部屋      そうして、何か安心したように大きく息をつきながら、小さく呟いた     「夢………か…」     初めての夢ではない     物心がついた頃から毎日、毎回見ている夢     流れ出ていた涙を拭い、窓の外を眺めていると、下から声が聞こえる     「カイルー!早く降りてきなさーい!」     カイルツ・アルディアス―16歳     こうして彼の毎日は始まっていた     「今行くー!!!」    そして、これからもずっと、この毎日が続くと思っていた     疑いなんかしなかった     なのに     それなのに…
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