前兆

2/21
前へ
/40ページ
次へ
トントントン   軽い、乾いた音を立てて、カイルツ・アルディアス―――カイルは、眠く、半開きの目をこすり、自身の銀色の髪を持ち上げながら階段を降りる     「レインさん、ミイナさん、おはようございます…」     カイルは、机を前に、朝食を取っている男性と、キッチンでフライパンの上で目玉焼きの形を整えている女性にそう声をかけた     レインさん、ミイナさん、二人が二十歳の時、10年前に記憶をなくして、いく場所もなく、さ迷っていた自分を拾ってくれ、ここまで育ててくれた…   言うなれば命の恩人である     声にまでは出さないが、カイルが二人の名前を呼ぶときには心の中だけで、   レインを父さん  ミイナさんを母さん     そう呼んでいる     目をこすりながら椅子に座り、朝食を取るカイルを見て、二人は微笑む
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加