序章--ある農民の述懐

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その日は雪解けから間もなくでまだ、つくしもふきのとうも芽を出しちゃおらなんだ。 わたしゃ、邑から三十分ほどばかり歩いた先にある森へカラの実を採りに行ったのさ。 すると、ガヤガヤとしゃべくる声が聞こえる。 ピンときたね。こりゃあ、チャチャプー族のしゃべくる声だろうとな。 わたしゃ、すっかり身をすくませちまった。なんせ、チャチャプーは残虐でならす部族さ。わたしの爺様の生まれた邑を潰したのもヤツらさ。 ヤツらの声が収まるのを待って、飛び出したよ。邑の方へさ。 何やら騒ぎ立てるのが聞こえたが、振り返る余裕なんかあるものかね。
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