01―日常―

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教室に入ると同時にチャイムが鳴る。 ふぅっと溜息をつきながら席に着くと 隣の席の西川雛乃(同中女子17番)がニヤっと笑う。 「セーフだね」 「ん…あぁ。」 「じゃあ、今日も自転車なんだ」 「おー。  乗って帰るか?」 「また…いいの?」 「雛が嫌じゃないなら」 「すっごく助かる」 二人は付き合っているわけではないが仲が良い。 転校続きで中学二年の中頃に転校してきた 春彦に良くしてくれたのが雛乃だった。 雛乃は右足が不自由らしく、 走ったりすることが難しい。 転校から三日目、遅刻しそうで今朝のように自転車を飛ばしていると 雛乃に出くわしたのだ。   「ぁ。西川…」 「…あ!清水君、おはよう」 「何をのん気に…遅刻するぞ?」 「うん…寝坊しちゃったのよねー  先生に言っておいてくれる?」 春彦は無言で雛乃の荷物をカゴに乗せた。 「清水く…」 「乗れ。後ろ座れるから」 その日から二人の仲は縮まったのだ。   雛乃はわからないが、 春彦には雛乃に対しての恋愛感情はない…と思う。 けれど、親友であることは確かだった。 過去にもう一人、そう呼べる友人がいたのだが とある事が原因で話さなくなってしまったのだ。   「う…ハルぅ~  ノート貸してぇ?」 「ん、今の?」 「うん…寝てた…」 「よだれ、出てたよ」 からかうと面白いのが雛乃の可愛さ。 今も慌てて鏡で確認してる。 「嘘だよ、ほれ」 「な…!  ハルの意地悪!!  次、HRだからその間に写すね!」 そう言うと自分のノートを開く。     HRが始まると担任の大木和子(三年一組担任)ではなく 委員長の要美那(女子6番)と村井賢二(男子16番)が前に出た。 「えーっと、今日は来月に行く修学旅行の班決めでーす。  私達三年は北海道の方に決まりました。  コースはこんな感じ」 しおりを配り始める。 それを見るとなかなか楽しそうだった。   班決めは結構すんなりと進んだ。 春彦は雛乃や雛乃が仲良くしている蒼姫刹那(女子1番)、 賢二と同じ班になった。 (ちなみに賢二も雛乃同様、春彦によくしてくれていて  男子の中では春彦と仲良くしているほうだった。)     「あ…すみません」 大木先生が立ち上がる。 「あのね、バスの座席なんだけど…  班でじゃなくって名簿順にって決まったの…ごめんなさいね?」 申し訳そうにするわけだが、 やっぱりブーイングはあった。 しかし美那が一喝したことで皆は落ち着いた。
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