01―日常―

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「…ハルごめん」 雛乃が突然悲しそうな顔をする。 「ん?どうした?」 「私ね…修学旅行行かないの」 「へ。何で?」 「ちょっと雛。  本当に行かないつもり?」 刹那も少し慌てたように口を挟む。 「…私、歩くの遅いし。迷惑…掛けるでしょう」 「何のだよ!」 春彦の頭に血が上り始める。 修学旅行だろ?!楽しい旅行だぜ?!   「おい、みんな!!」 春彦が突然大きな声を出すので驚いたように振り向く生徒が多かった。 「ごめん、イキナリ偉そうに。  雛を…雛が修学旅行に参加するのは駄目か?!」 「ちょ…ハル!」 春彦は雛乃を無視して同じ事を問う。 皆はポカンとした表情になる。 「何?どうしてそうなるの?」 美那がこっちへやってきた。 雛乃は何も言わず下を向いてしまった。   「雛、どうしてそんな事…」 「だ…って!  前の林間学校だって…」 「西川さん…  前もお話しましたが、今回のコースは要さんが提案してくれて  あなたでもちゃんと一緒に来れるようにしてくれたわ。  だからそんな事言わないでください」 雛乃は数週間ほど前、大木先生に事情を話して 修学旅行の欠席を申し出ていたのだった。 「…だからね、私はあなたの分のチケットも買ってあります」 航空券の事だろう。 雛乃の目に涙が溜まっていくのがわかった。 それを見て春彦は頭をクシャクシャと撫でる。 「みんな迷惑だなんて思ってねーよ。  雛も一緒に行くだろ?」 「私…!  雛が休むって言うなら行かないから!  私も欠席する!」 「…せっちゃん」 刹那が雛乃の手を握った。 雛乃は深々と頭を下げ、『ありがとう』と何度も言った。    
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