プロローグ

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「名前?」 「うん、私がつけてもいいかしら?」 男はチラっと愛する妻が手を握っている 数日前生まれた息子を見る。 気持ち良さそうにしている寝顔がとても可愛らしい。 「…いいよ。  どんな名前を考えてくれたんだ?」 「気に入らないなら言ってくださいね?」 そう言うと女は引き出しから一冊のノートを取り出した。 そのノートは女が子供を身ごもった事がわかった日から 毎日かかさずつけていた日記帳だと男は知っていた。   「どうかな?  男の子だから左がいいと思うの。  右でも大丈夫だと思うけれど…  あなたが選んでください」 ノートを覗き込む。 多分女は夫と自分、二人の名前に使われている漢字を使いたいようだった。 だから、女の子なら…男の子なら…と分けられた名前には どちらにも二人の字が入っている。 それを言うと女は照れていた。 「気に入ったよ!」 そう言うと男は息子の頭を撫でながら、決まった名前を呼んでやる。 息子は気に入ったのか男の手をギュウっと握った。   「よかった。気に入ってもらえて。  それにね、私の名前の一字を2つとも同じにしたのはね、あなたの…」 女は耳元で囁く。 なんとなくわかっていたのだがそれはやっぱり嬉しかった。
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