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鋼線は抵抗少なく簡単に切れた。
しかしそれはラーナの首を落とすために張られたものではなかった。
クリマが鋼線を断った瞬間、頭上から液体を浴びせられ、近くにあった虎バサミが作動して火花を散らした。
火花は二人の頭からかぶった揮発性の高い液体に引火する。
二人は文字通り火だるまになって廊下へ転げ出た。
「迂闊(うかつ)だった……」
クリマが自嘲しながら床を転げ回って火を消す。
ラーナは燃えさかる炎を気にも止めないで、大剣を拾うと出口に向かって構えていた。
「ここで張ってりゃいつかは出てくるねぇ」
クリマはラーナの体中を、その身ではたいて火を消した。
「姉さんのその強い気持ちには感服だけど……。奴は抜け道を用意しているに違いない。殺気が消えた今、逃げないと次がなくなる」
ラーナとクリマは傷だらけで歯を食い縛るとその場から撤退した。
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