84人が本棚に入れています
本棚に追加
/287ページ
「!」
巨大蟻が倒れたシールズを見逃すはずがなかった。
顎を開いてシールズに襲い掛かる。
シールズの上半身は坑道には出ていたが、土の精霊が巣窟を閉じ始めており、次第に土が固まって出口の円を小さくしていた。
「くっ!」
シールズの左足の脛に巨大蟻の牙が食い込む。
ハードレザーのブーツが直に足を傷つけるのを防いだが、咬みついた牙の力は強固だった。
シールズは右足の先を蟻の頭にぶつけるが、足を挟む力は弱まらない。
土の精霊が固めた出口は元来の円の半分以下になっていた。
シールズは何度も右足で蟻を蹴り、仲間達は皆がシールズを掴んだ。
「急げっ!」
ハリソンの号令でシールズの体が浮き、一気に引き出される。
シールズは最後に渾身の蹴りを蟻の頭にぶつけた。
顎が弱まりシールズの全身が巣窟から抜けた瞬間、土の精霊によって出口は完全に防がれた。
「た、助かった……」
安堵のため息をついた後、シールズはそう言うのがやっとだった。
他の仲間達も息を絶え絶えに倒れこんでいる。
「あ……、ブーツ……」
シールズの左足のブーツがなくなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!