【イチ】

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「なぁにいってんのー」 下を向いて笑う彼の顔が映る 私はぼーっとしたままの頭で、続ける 「いてくれてよかったよー」 んー?と幼い子どもに相づちをうつみたいに、 彼は笑う 「壱がいてくれてよかったよー・・」 んー、と次は悩むような音が聞こえた よかったんだからね、と納得させるように言った 壱がいてくれて、よかったんだから。 「そっか」 「そうだよー」 「そうだねー」 「そう・・」 再び抵抗できないくらいの眠気がやってきて、 私は掴んでいた手を離す 額にあった心地好い冷たさがなくなるのがわかった 「ねむい?」 「うーん」 「スパゲティ、ラップしとくね」 「うん」 「明日の昼にでも、食べてね」 そう言って、すこし髪を撫でた 彼の立ち上がる気配 そのまま戻って来ないような気がして、 私は「ここにいて」と言った だけど眠さに負けた体はいうことを聞かなくて、 私の掠れた声は空気中にまぎれた
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