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「なぁにいってんのー」
下を向いて笑う彼の顔が映る
私はぼーっとしたままの頭で、続ける
「いてくれてよかったよー」
んー?と幼い子どもに相づちをうつみたいに、
彼は笑う
「壱がいてくれてよかったよー・・」
んー、と次は悩むような音が聞こえた
よかったんだからね、と納得させるように言った
壱がいてくれて、よかったんだから。
「そっか」
「そうだよー」
「そうだねー」
「そう・・」
再び抵抗できないくらいの眠気がやってきて、
私は掴んでいた手を離す
額にあった心地好い冷たさがなくなるのがわかった
「ねむい?」
「うーん」
「スパゲティ、ラップしとくね」
「うん」
「明日の昼にでも、食べてね」
そう言って、すこし髪を撫でた
彼の立ち上がる気配
そのまま戻って来ないような気がして、
私は「ここにいて」と言った
だけど眠さに負けた体はいうことを聞かなくて、
私の掠れた声は空気中にまぎれた
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