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青年は、この話の主旨を途中から忘れてしまっていた。
子供に自分の名前のいわれをせがまれたのに、何を関係のないことまで言っているのだと、頭が痛くなってきた。
目の前の椅子に座っている子供は、茶色の短い髪によく日に焼けた肌を持っていた。
まだ5歳と幼いが、母親に似た茶眼は既に大人びているように見える。
子供用の繋ぎの服の中には、唯一ルーラが残していったペンダントが隠されている。
この子がそれを隠す理由を青年は察していた。
とても大事なものだから、人に見せたくないのだ。
「じゃあオヤジがぼくのなまえつけたんだ?」
そう言うと、子供は細い眉をしかめた。
青年は黒茶色をした両眼を瞬かせると、クロゼットから服を選び始める。
ついでに扉の内にはめ込んである鏡を見て、髪を触りながら言った。
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