薄い影法師

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暑苦しく香水だの汗だの色々な匂いの入り混じった香りが僕の鼻へツンッと入って行く。 毎日同じ汽車に乗り、毎日同じ道へ通学して気ままな生活を送っている僕は特別目立つわけでもなく、ごく一般の中学三年生である。 ただ一つ言っていいのは、今で言う大変な小説ヲタクである。ジャンルは問わない。何でも読める。図書館の本は大体把握しているし、学校帰りの余った時間は書店へと行って面白そうなのに目を通している。 しかし、大抵は中古で買っている。 ……何故かって?安い方が沢山買えるからだ。 そんな毎日同じ生活を送っていた日のこと。 僕はいつもの中古屋で本を捜していた。 自動ドアをくぐり抜ければ、本に染み付いたカビやホコリの風が僕を迎えるように舞ってくる。 コツコツとローファーの音を立てながら横目で背表紙を見ていく。
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