こぞを恋ひて行きて

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夢の中でなぞった指は ひどく朦朧とした頭の中で きっと君だと確信した。 こんなに冷たく、 壊れ物を扱うように優しく触れるのは ひとりしか知らない。   神様、 あたしは、そのひとりで良いのに。   気が狂いそうな毎日に置いていかれぬよう、 荒んだ横顔に気付かれぬよう、 煙草を押し消す。 誰かと同じにおいに 痂を剥がされるのを感じながら。 せめて夢の中だけでも、 そう願いながら。
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