汽笛のかぜ

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サンタさんは何事かとマヤに近づき、静かに背中をなでました。 それが効いたのかどうかは分かりませんが、マヤの咳はだいぶ落ち着いてきました。   「グラッツェ、サンタさん。」   マヤがそう言うとサンタさんは小さな声で、どういたしましてと言いました。 でもマヤはある事に気づきます、サンタさんの服のところどころに不自然に白い部分があります。   それもそのはずです、そのサンタさんは赤い服を着ていたのではなく元々は白い服を着ていたのですから。   男の名前はホセ。 彼もまた、貧民街の生まれでした。 しかし貧民街と言っても、マヤの住んでいる貧民街とはまた別の場所で治安がとても悪いところでした。   このホセという男も、たった今数人殺してきたところなのでした。 彼の目的は、強盗です。いつもならきちんと金品を奪ってから逃げるのですが、今回は運が悪く金品を奪う前に警察に見つかってしまいました。 男の服は、返り血で赤くなっていたのでした。   「捕まるわけにはいかない。」   ホセは、必死で逃げました。すると、何故かとても懐かしい匂いのする場所に入りこんだのです。そう、貧民街のマヤのうちでした。 マヤのうちは、ホセのうちにとても良く似ていたのです。   マヤは、サンタさんの服をそっと触りました。べちょ、っと嫌な感触がします。 マヤは、それが血だとすぐにわかりました。   「サンタさん大変!怪我してるのね!」   マヤは、すくっと立ちあがるとホセの服を脱がしました。 ホセは、少しドキッとしました。自分がサンタじゃないとバレたら、この子を殺してまた逃げなくてはならない。ホセの頭の中はぐるぐるとむやむやでいっぱいでした。   ホセの身体をぐるぐると見回り、マヤは安心しました。   「よかった!怪我はないのね!よかった!」 マヤはまたニコニコになりました。 そしてマヤは、自分のかぶっていた布団をサンタの身体に巻き、脱がせた服を洗いにいきました。
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