汽笛のかぜ

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ホセは、布団にきゅっとくるまれると故郷の母親を思い出しました。お金もなく、食べ物もなかった少年時代、よく母親がわけてもらった小麦粉で「すいとん」を作ってくれたっけ。寒い日にはこうやって布団を身体に巻いてくれて、即興で作った俺が主役の物語を話してくれたっけなあ。 ホセは懐かしい気分になりました。   洗濯を終えると、マヤは今日の晩御飯の残りのスープを温めてホセに渡しました。 本当ならそんな事をする余裕はないのですが、せっかくサンタさんが来てくれたのです。 マヤは何かおもてなしをしたかったのです。   ホセは、スープを受け取るとガツガツと食べました。外は雪です、温かいスープが身体に染みていきます。 ホセは一気にスープを飲み干すと、げふっと白い息を吐きました。   「お嬢さんも寒いだろう、こっちにおいで」 ホセはあぐらをかいて、マヤが座れるように隙間をあけました。マヤはまたニコニコしながらホセのあぐらの上にすっぽりとはまり、二人で布団をかぶりました。ひょこんと、顔だけ出して。
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