汽笛のかぜ

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信じる者は救われると、誰が言ったのでしょうか。 いくら良い事をしても、いくら信じても、その気持ちに応えてくれる「神様」なんてものはいません。 信じたら信じたぶん、誰かがその信用を利用して、何かを得ようとします。   ホセは苦しくなりました。 こんな幼い子供が、何かを信じる事をやめようとしているなんて。 そして自分がした今までの過ちを、たくさん思い出しました。   「いいかい、お嬢さん。」   ホセは、ゆっくりと口を開きました。   「神様も居ないし、サンタさんだって本当は居ないんだ。」   マヤは目を丸くして、ホセの話を聞きました。   「この世界に、信じられるものなんてこれっぽっちも無いんだ。お金も、人も、家も、物も、いつかは何かを裏切る。世界ってのは、悲しいけどそういう風に出来てしまってるんだ。」   「それでもね、きっとそれでも、信じる事をやめちゃいけない。」   「きっとお嬢さんはこれから、たくさんの裏切りを見るだろうし、たくさんの辛い事があると思う。」   「でも、いつだって自分の事だけは信じてやらなくちゃダメだ。自分のしてきた事を信じなくちゃダメだ。」   「じゃなきゃ、俺みたいになっちまう。」お母さんが帰ってきたのかな…マヤがそう考えている中、ホセは冷静でした。冷静に、理解していました。   キラリ、光るナイフ。 悲鳴、割れるグラス、カップ、皿、倒れるイス、したたるワイン。 まず始めに刺したのは、ベージュ色の汚いコートを着た髪の長い美人な女だった。 まずは誰でもいいから殺す、それによって冷静さを失ったヤツらから金品を頂く。それがいつもの手口だった。   「お嬢さん、どうやらトナカイが迎えにきたみたいだ。悪いけど行かなくてはならない。」 ホセは、布団をマヤにかけ直すとまだ湿っているシャツを羽織って玄関に向かいました。 「サンタさん。」マヤがホセを呼び止めます。   「やっぱり私、プレゼントはいらないわ。だからね、お願いがあるの…」   「えっとね…。」      
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