汽笛のかぜ

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マヤが窓を開けると、ふわっと冷たい風が部屋に入りこみます。 散らばったガラスを踏まないように、きちんと靴をはきました。 ジャリジャリと破片が鳴ります。   マヤはこの窓から見える陸橋が好きです。 その陸橋を走る鉄道が、極まれに汽笛を鳴らすのです。 かん高いその声は、マヤをしあわせな気分にさせます。今日は鳴らないかな、と待ってみますが今日はイヴです。鉄道もおやすみです。   マヤは、お母さんにせめてものプレゼントのため手紙を書きました。 そこには、力強い文字で「グラッツェ」。   と、その時   ぷぉーっ   汽笛が鳴りました。 マヤはまた、ニコニコになりました。  
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