透明

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羽が生えてなくても、届く場所ってあるのだろうか。 ああ、窓から差す光が至極ふにゃふにゃしてる。   昨日、美人アナウンサーが自殺したっていうニュースが流れてた。 私と母さんは、ただそのニュースをじっと見つめて、煮物とご飯を口に運んでた。   原稿を読むアナウンサーがその自殺した彼女との思い出を語っているときに、おもむろに母さんは言ったのだった。   「きっと鬱ね、ブログでも様子がおかしかったみたいだし。」   私は、そうねと答えて良く煮えた竹の子にかじりつく。   「私は悪魔になった、って書いてたみたい。なんだか先が楽しみね。」   「楽しみ?」   母さんは答えなかった。   不謹慎だとか、そういう問題の前に 母はそういう人間なのだと、諦めた。   遮光カーテンが欲しい。 うすらかな光さえも遮れるような。   じゃないとこの、ゆるやかな日差しを大事にできなくなりそうだ。
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