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夕食を済ませ、彼女はキッチンで使い終えた食器を洗っていた。
一方、オレはくつろいでいるのか、それともぐったりしているのか…なんとも中途半端な体勢でソファーに身を沈め、見るとも無しにテレビに視線を向けている。
「相当お疲れみたいですね。」
ふと、声のした方に視線を移す。食事の後片付けを終えた彼女がエプロンで手を拭いながらトコトコと歩み寄ってきた。
「よいしょ、っと…」
用済みになったエプロンを放り投げ、そしてオレの隣に座った。
なんだかよそよそしいような…付き合い始めて間もない頃の初々しさ。それに近い雰囲気を感じた。
「明日、日曜日だけど…あたしも休みなんだ。」
「あ~、そういえば先週辺りから言ってたっけ…。」
オレの言葉に彼女は首を縦に数回。そして、その表情からほんの少しの堅さが消えて、入れ代わるようにして期待がクリッとした目に浮かんだ。
「うん、あたしにとって…と~っても貴重な日曜休み!」
瞳に映る期待の色は一層濃くなったような気がした。
普段であれば、その意味深な表情からなにかしら気取ることができたかもしれない。
しかし毎夜残業続きの今のオレの状態は、いわゆる『普段』通りとは掛け離れたもので、『日曜日=のんびりしたい』という、年齢にはおおよそ見合わない考えが脳裏にちらついていた。
「だね…久しぶりに日曜日にゆっくりできるね。」
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