Chap1.ホットケーキ

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ハッとした。 抱えていた倦怠感さえも感じる余裕をなくした。 ポロポロと涙をこぼす彼女。小刻みだった華奢な肩の震えは、徐々に大きくなり、遂には震えているというよりもしゃくり上げる形になった。   「…あの、さぁ…ごめ」   「もういい!」   謝罪の言葉はあえなく遮られた。 悪かった。悪いのはオレだった。だからこそすぐに謝ろうとした。 しかし、言葉は遮られて、声を押し殺した微かな泣き声が響くだけ。 それでも、謝らなきゃならないのはオレの方だ。だから…   「ホントにゴメ…」   「知らないっ!」   「オレが悪…」   「もういいってば!」   「なぁ、聞いてく…」   「聞くことなんかない!」   「オレは聞いてほし…」   「聞きたくない!」   「なぁ、頼むから…」   そう言いかけた瞬間、彼女は溢れんばかりの涙目でオレを睨みつけて、プイッとそっぽを向いた。 そして、オレのすぐ傍らにあったクッションを乱暴にひったくると、それをギュッと抱え、オレに背を向けて小さく丸まってしまった。   「ホントに悪かったよ、ゴメン。」   「…。」   「すごく大切な日なのに…忘れてたなんて有り得ないよな?」   「…。」   「ちゃんと話がしたいんだ。こっち、向いてくれよ…。」   「・・・。」
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