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お坊さんのお経が終わり、母親等の話が終わり、棺の中に華を添える時がやってきた。
1人、また1人と華を添えては別れの思いを口にする者、涙にする者が去っていく。
そしてゆっくり、ゆっくりと自分の番が近付いてくる度に、ダイは胸が苦しくなってきた。
この華を添えたら本当にもう今泉は帰って来ない、そんな思いが強くなっていく。
ついに耐えれなくなったダイは華を投げ捨て列から走り去った。
そのまま葬儀所を飛び出して、止めどなく溢れる涙で滲んだ空を見上げて今泉を想った。
「約束したやんか。 また海行こうって約束したやんか。 ふたりで約束したのに、1人じゃ叶えれんやんか」
あれは中学2年生の夏、ダイは今泉と莉奈とナナと新宮浜へ海水浴に行った。
2台の自転車で2ケツして、長い長い上り坂と下り坂を走った夏。
ダイが初めて友達と行った海。
嫌いだった磯臭ささえも心地好く感じた。
海に3日泊まった帰り、今泉とダイは「絶対もう一度来よう」と約束した。
あれから約2年、離れたり、近付いたり、今泉とダイは濃い関係を築いてきた。
そしていつしか親友になった。
それがこんな形で終焉を迎える事になるなんて…。
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