PAIN

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* * * その日ダイは直ぐに皆と解散して家に帰った。 いつもはこのままオールするところだが、買い物の後は別だ。 早くコーディネートしてみたいのだ。 家と言っても祖父母の家で、小さい頃からじぃちゃんばぁちゃんっ子だったダイはこの頃祖父母の家に住んでいた。 仕事は辞めてしまった。 とりあえずと働いた内装工、親方と大喧嘩してすぐに辞めてしまった。  金に困ることはなかった。 身の回りの物は殆んど万引きで手に入れれたし、金はばぁちゃんの財布からくすねていた。 食べ物は帰って来ればある。 だからダイは遊んで暮らせた。 バイトに行ってくると言えば信じてもらえた。 だからそんなにうるさく言われなかった。 ただ夜中に遊ぶのは気に入らなかったらしく、よく口喧嘩になった。 それでも次第に気付かれ始めた。 毎晩の様に遊びに行くダイを見て、本当は仕事なんかしていないんじゃないかと思い始めたばぁちゃんは、よくダイに「ホントに仕事しよるとね?」と問うようになった。 「しよるに決まっとろーが!! いちいちうるせったい!!」 こんなセリフ、ホントは言いたくないのに。毎回そうして自分を恨んでみても、結局していることは変わらなかった。 日が昇っている内に起きた時は、近くの服屋や靴屋、ドラッグストア等に万引きに行った。 日が沈んでから起きた時は、飯を食いにだけ居間に降りて、あとは殆んど二階にある自分の部屋に閉じこもった。 携帯を持っていなかったダイは家電を使った。 頻繁に使った。 そのことでもよく喧嘩になった。 夏、ダイはエスカレートした。 実は春先くらいからシンナー、通称‘ボケ’をしていた。 ダチと屯ってしていたそれとは違って、夏に入ってからはひとり部屋にこもってするようになった 。 ばぁちゃんの財布から盗んだ金で買ったコンポで爆音にした音楽は、ガラスや壁をズンズンいわせた。 部屋には鍵を着けた。 ヤンキーがよく出入りするようになったダイの部屋は、シンナーの臭いとタバコの煙と、香水の匂いが立ち込めるクラブに変わった。 祖父母との喧嘩はヒートアップしていった。
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