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「マジで!?」
「マジで! ほらここ」
「うわっ、ありえ~ん。 それ訴えたら立派な犯罪で捕まるやん」
「やね。 焼そばごときで…」
「それたい! ダイのじぃちゃんおかしくなったっちゃないと?」
「かもしれん」
「心配かけ過ぎやって」
「うん…」
「仲直りしてきぃよ」
「嫌やし! じぃちゃん耳がちかっぱ悪いっちゃん。 話すだけで疲れる」
「あー…」
「テレビとか(音を)40以上上げて見よるんばい!」
「でか!」
「やろ!」
「ダイもコンポうるさいばってんね」
「うぜ」
俊とダイが笑ってるとこへ、焼そばを持ってばぁちゃんが階段を上がって来た。 ドアをゆっくり開けて入ってきたばぁちゃんに、すかさずダイが言った。
「ばぁちゃん、ごめんね。 なんか色々…」
ごめんなさい…。 それが今のダイの素直な気持ちだった。 本当はじぃちゃんにそう言いたいのに、ごめんって大きな声で言うワケにもいかず、ついつい会話を避けてしまう。 もう少し耳が良かったら…、そう願えて仕方がない。
ばぁちゃんはちょっと俯き加減で「うん」と答えた。 それはただ唸っている様でもあり、疲れ果てた深い溜め息にも似ていた。
「ダイちゃん、はよ寝んしゃい」
「うん。 ばぁちゃんもはよ寝りぃよ。 体調崩すばい」
「はいはい」
やっと少し笑った。 ダイはばぁちゃんの疲れた顔を見るのが嫌いだった。 そしてその疲れた顔は自分のせいだと分かっていた。 辛かった。 いつも心とは逆のことをしてしまう自分に腹が立った。 どうしていつもこうなんだ、どうして俺はこうなんだ。
焼そばを食べてすぐに布団に入ったふたり。 寝息を立て始めた俊の背中では、ダイが回想に耽っていた。 小さい時から、孫の中で一番と言って甘やかしてくれていたじぃちゃんとばぁちゃん。 そんなじぃちゃんとばぁちゃんが大好きだった。 そしていつも「じぃちゃん!」「ばぁちゃん!」と飛んで来るダイを二人は心から愛していた。 その関係が壊れ始めている。 俺のせいなんだ。 分かっていても、この唇が、体が、手が、言う事を聞かないもどかしさに、ダイは苦しんでいた。
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