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ある日今泉が泊まりに来た。
ばぁちゃん家から今泉ん家まで、空港と山を挟んでなかなか距離があった。 その日今泉が「相談がある」と電話を掛けて来て、空港で待ち合わせすることになった。
先に着いたダイは待つこと15分、やって来た今泉の荷物を見てビックリした。 まるで旅行へ行く様な荷物。 家出したんだと悟ったダイは、「俺ん家来ぃ」と言って荷物を半分持ってあげた。
歩きで来たダイだったが、この荷物にあの距離じゃ…とバスでばぁちゃん家に向かった。
「相談がある」と言ったわりには相変わらずよく喋る今泉。 気にはなったが、とりあえずこっちからは訊かないでおこうと、ダイはいつも通りに接した。
ばぁちゃん家に着くと、ダイは今泉を急いで二階に通した後、ばぁちゃんの元へ向かった。
「ばぁちゃーん」
「ダイちゃん。何ね?」
「あ…お願いがあるったい?」
「何ね、嫌な感じがするやなぃね」
「その嫌な感じ的中。 実はくさ、一時だけじぃちゃんに内緒で友達泊めさせてくれんかぃな…」
「は!? この前…!」
「分かっとる! 今回は単に遊びで泊まりに来たワケやないとよ。 ちょっと色々あったみたいで困っとるっぽいっちゃん。 大事な大事な友達やけω、お願い!!」
「ダイちゃん? ここはホテルやないとよ?」
「分かっとる! ばぁちゃん達には絶対迷惑掛けんけω、お願い!! この通り!!」
なかなかすんなり「うん」とは言ってくれないばぁちゃんに、ダイは粘って粘って粘って何度も手を合わせた。
しかし良い答えをもらえないままじぃちゃんが帰って来てしまった。 ダイは最後に「頼りにとーけん!」と念を押して、じぃちゃんを避ける様に二階へ戻って行った。
じぃちゃんもダイを避けている様だった。 すれ違う時、ふたりは互いに目を逸らしていた。 ふたりの溝は、日に日に深くなっていった。
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