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今泉の背中を見送ってから3ヶ月近く経った。
はじめは取れていた連絡も1ヶ月で途絶えてしまった。 それは今泉が支払いを怠ったからだった。 その時はダイが今泉の分も奮発して支払ったが、ばぁちゃんが許さなかった。 2ヶ月目には強制解約され、今泉の消息は更に闇を深めることとなった。
ダイは今泉を懸命に探した。 金の事はどうでも良かった。 それよりも今泉の身が心配だった。 探すといっても出来る事は電話で友達に聞くくらいだったが、ダイは必死だった。 誰に訊いても返って来るのは「見ていない」の一言。 ちゃんと元気にやっているのだろうか、ダイは心配で仕方がなかった。
そして8月がやって来た。 高々と昇る太陽。 ジリジリと焼ける様な陽射しがアスファルトを照りつける。 毎日付けているクーラーもじぃちゃんに制限されて、ダイは水風呂に入る癖を覚えた。
そんな8月のある日、少し遅く起きたダイは、険しい顔をして駆け寄って来るばぁちゃんの勢いに気後れしながら、その慌ただしさのワケを訊ねた。
「何や朝からバタバタして。」
「ダイちゃん! 落ち着いて聞いてね。」
「なん?」
ダイは胸騒ぎを覚えた。 ばぁちゃんがそんな態度だったからではない。 昨日の晩に嫌な夢を見たからだった。
「あんね、昨日の夜、今泉くんが亡くなったって!!」
まだ頭が寝ぼけているんだ。 早く目を覚まさないと。 暑さのせいかな。
ダイは自分の耳を疑った。 俺はボケているんだと思った。 もしくはばぁちゃんがボケているんだと思った。
でも違うみたいだ。 どうも夢ではないようだし、ばぁちゃんも平常とは言えない振る舞いだがどうみてもボケてはいない。
「ばぁちゃんそれ誰から聞いたと?」
「高口莉奈ちゃんって女の子。 お友達?」
「うん。 幼馴染みでバリバリ仲良しやん。 …ちょっと電話して聞いてみるけん」
夢が現実に…。 そんな事は思いたくなかったが、ダイは焦った。 急いで莉奈に電話を掛けた。
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