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好きじゃなきゃ…――。
彼の口から、こんな言葉が聞ける日が来るなんて、思ってなかった。
夢を見ているみたいで、心の中で何度も彼の言葉を繰り返した。
「真由利……」
囁く様な彼の声と、伝わる温もり。
そこに在るのは、確かな現実。
あたしも、好きって伝えたかったのに、涙ばかり溢れて言葉にできなかった。
だから、背中に腕を回して、何度も頷いた。
「…で、あいつは俺んだから、絶対、手出すなって彬言って……むぐっ…んー!」
「かーさーのーっ! 真由利に何吹き込んでんだよっ」
「ぷは……、何って、杉崎が購買に行ってる間いつも話してたこ…いってぇ……」
「だーれーが話していいって言った!?」
最近、彬は笠野くんにからかわれてばかり。
あたしと彬の事情を知った笠野くんは、その溝を少しでも埋めようと気を遣って色々と教えてくれる。
最初は、断ったけど、笠野くん自身が喋りたいみたいで、彬とのやり取りが面白くて、黙っている。
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