~ 押し殺した気持ち ~

14/16
前へ
/19ページ
次へ
「彬、短気過ぎー。杉崎、こいつでいいの? 絶対、束縛されるよ。考え直すなら今のうちだよ。どーせなら俺に乗り換え……」 「ないっ!! どさくさに紛れて何言ってんだテメーは。真由利、こいつに近づくな。とぼけた顔して実はすんげぇタラシだから。絶対、二人になんなよ」 「とぼけた顔って失礼な…。せめて人懐っこい顔って言ってほしいよ。でも、気が変わったらいつでも言って。俺、フリーだか……」 「まだ言うか、テメーは…! 真由利も何か言ってやれ」  毎日、こんな調子。  笑い合える毎日があるのに、時々、夢なんじゃないかって思う瞬間もあって、隣りにいる彬を見つめた。 「な、何だよ」  強がったことばかり言うけど、本当は不安で仕方ないんだ。  言葉にしないと伝わらない想いがあるから。 「彬より先に笠野くんに会ってたら、わかんないけど……」 「――帰る!」  拗ねた子供みたいに、彬は勢いよくドアを閉めて出ていった。 「心の狭い男だなぁ…」
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加