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「彬、短気過ぎー。杉崎、こいつでいいの? 絶対、束縛されるよ。考え直すなら今のうちだよ。どーせなら俺に乗り換え……」
「ないっ!! どさくさに紛れて何言ってんだテメーは。真由利、こいつに近づくな。とぼけた顔して実はすんげぇタラシだから。絶対、二人になんなよ」
「とぼけた顔って失礼な…。せめて人懐っこい顔って言ってほしいよ。でも、気が変わったらいつでも言って。俺、フリーだか……」
「まだ言うか、テメーは…! 真由利も何か言ってやれ」
毎日、こんな調子。
笑い合える毎日があるのに、時々、夢なんじゃないかって思う瞬間もあって、隣りにいる彬を見つめた。
「な、何だよ」
強がったことばかり言うけど、本当は不安で仕方ないんだ。
言葉にしないと伝わらない想いがあるから。
「彬より先に笠野くんに会ってたら、わかんないけど……」
「――帰る!」
拗ねた子供みたいに、彬は勢いよくドアを閉めて出ていった。
「心の狭い男だなぁ…」
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