~ 押し殺した気持ち ~

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 こんな時、どうしたらいいのかな。  あまのじゃくが伝染して、素直な言葉が出てこない。  どうしたら、機嫌直してくれるかな。  彬のことだから、きっと、何を言ってもぶっきらぼうな返事しか返ってこないんだよね。 「心狭いって笠野くん言ってた」 「なら、心の広い男探せよ」  ほら、また、心にもないこと。  感情的になって、本音を吐き出したのが嘘みたい。 「な、何がおかしいんだよ」  ベタベタするより、こっちの方があたしたちらしい…かな。 「真由……」 「だいっきらい」 「だったら他の……」 「嘘。大好きだよ」  もう離したくない。  失いたくない。  だから、ひとつずつ、受け止めていこう。  逆のことを言ったって、彬は抱き締め返してくれる。 「んなこと、わかってる」  素直じゃないやり取りに、2人で笑った。  暖かい手が髪を撫で、頬に触れる。 「絶対に離さないから、覚悟しろ」  微笑んで頷く。  静まり返った校舎の片隅で、誓いのキスを交わした。      ― END ―
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