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あの日から言葉を閉ざした。
身体中の水分が外に出てしまうくらい泣いたのに、泣き足りない。
小さな事だった。
今にして思えば、そんな事で怒らなくたってよかったんじゃないかって思うくらい。
後輩と仲良く話す彼を許せなくて、思ってもいない言葉を吐き出してしまった。
だいっきらい…――。
彼は何も言わなかった。
ただ、私を見つめて、哀しそうな表情を向けただけ。
あたしは子供だった。
独り占めしたかったんだ。
彼の笑顔も、優しさも、全て。
あたしがあの時、走り去ったりしなければ、こんな現実は存在しない。
それは、悪夢だった。
自分だけのものでもないのに勝手に泣いて、喚いて、その揚げ句、事故に遭った。
涙で滲んだ視界。
「真由利(マユリ)っ!!」
思わず立ち止まったと同時、あたし目がけて車が迫っていた。
認識したと同時、音が消えた。
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