~ 押し殺した気持ち ~

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 あたしを庇ってそうなったことなど、周りは知らないから色々言うけど、彼の痛みに比べれば、どうってことはない。  彼の大好きなバスケットを、あたしが奪ってしまったから。  だから、何を言われても平気。 「早く行けよ。腹減ってんだから」  彼は、あたしを許さない。  彼の未来を奪った、あたしを。  だから、あたしには冷たく当たる。  彼にはその権利があるし、それで彼の気が晴れるとは思っていないけれど、償いができるなら、どんな事でもしようと思った。  込み合う購買に並んで、おにぎりとザンギと菓子パンを抱えて教室に戻る。  注文がない時は、いつもと同じ。  無言に差し出して、あたしは自分の席で一人、お弁当にありつく。  同じ高校に入って3年。  どんな形でもいい。償おうと決めたから、友達は作らなかった。  人との関わりを避ける為に、喋らないと決めた。  笑わないと、決めた。 「彬(アキラ)いつまで杉崎にパシリやらせんの?」
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