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「さぁな。あいつが自分から、やめるって言うまでじゃねぇ」
毎日、似たようなやり取りが繰り返される中、彼は決まってそう言った。
あたしは、何を言われても振り返らない。
もう慣れた。
彼がもういいと言うまでやめるつもりはないし、事実を知らない人に説明したいとも思わない。
この傷を知るのは、あたし達だけで充分だ。
傷を背負わせてしまったことで得られた、彼との唯一の繋がり。
時々、その重さに耐え切れなくなる時があるけれど。
笑いかけてくれる日が来なくてもいい。
どんな形でも、傍にいられるなら、このままでいいと思った。
「彬、待ってんの?」
放課後、彼の友達に声をかけられて、あたしは少し距離を取って頷いた。
「警戒してる? 取って食おうって訳じゃないから安心してよ。彬なら体育館だけど、行く?」
首を横に振って、窓際1番後ろの席の彼の席に座った。
鞄がかけてある。
そのうち戻ってくるだろうと、窓の外を眺めた。
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