~ 押し殺した気持ち ~

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 感情的になった気持ちを沈めるのに思ったよりも時間がかかって窓の外を見ると、陽が沈みかけていた。  彼はもう帰ってしまっているだろう。  別に、一緒に帰ろうって約束していた訳じゃない。  入学したばかりの頃、松葉杖をついて歩く彼につき添って、それが習慣になっただけ。  彼はもう一人で歩ける。  それでも、教室が近づいて、話声が聞こえると、心のどこかで安心している自分がいた。  他愛もない話で盛り上がっているから、キリのいいところまで話終えるのを待てばいい。 「……な、真由利の顔なんて見たくねぇよ」  ドアが開けっ放しの教室に一歩踏み込んで聞いた言葉は、耳を疑うものだった。  あたしの鼓膜を震わせたのは、確かに彼の声だった。  頭を思い切り殴られたような衝撃を受けた。  まさか、そこまで嫌われていたなんて、思いもしなかった。  ドア口に立ち尽くすあたしに気づいて、彼ははっとした表情を向けた。  許さないって憎まれた方がまだ、マシだった。
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