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 そういえば…と思い出したかのように香月が再び話し出した。 「報告はいつも通り書類で。必要経費は領収書を必ず貰ってこいよ? 後は事務局で必要な物は受け取って行け。詳しい場所や内容も事務局に届いているからな。まぁ、夜行と宝院がいれば問題はないだろうがな」 「ちょっと何で天斗と珠玲がいればなのよ。あたしらは?」 「柊屋……自分の事を知ることも大切だぞ」  香月の言葉に引っ掛かりを覚えた梛奈は眉をひそめた。それに対し珍しく真面目な顔つきになった香月は、少しだけ憐れみを込めた口調で言った。 「えっ、それってどういう――」 「はい、そこまで。香月先生、会議が始まりますよ。柊屋さん達は明日から校外学習なんですよね。今日はもう帰って準備をした方がいいのでは?」  不毛な争いを始める前にと、香月と同期の魔導師――御影圭吾が爽やかな笑みを浮かべながら、割って入った。 「あっ、はい。やっぱり御影先生はいいなぁ。誰かさんと違ってめんどくさがらないで真面目にやってくれそうだし、優しいし」  梛奈の厭味な台詞に怒ることなどせず、むしろ香月は意地の悪い笑みを浮かべた。 「ほぉ、柊屋はそんなに課題がやりたいのか。仕方がないな、お前には特別――」 「わーっ! ごめんなさい。何でもないです! 失礼しまーす」  慌てて職員室から飛び出して行った。  
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