いちのぜろ

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入学式に遅刻する生徒が、一体この世の中に何人いるのかは分からないけれど、その何人かのうち、新一年生が入学式当日に遅刻し、晴れ晴れしい式に出席せず、遅刻した気まずさと、緊張と退屈の式典時間を過ごしたくがない為に、今こうして屋上に向かっている人は、果たして何人いるだろうか。   しかし、とりあえず時間を潰す為にあてもなくフラフラ――――するわけにもいかなかったのだ。フラフラする及び教室に待機していると、教師に発見されて、入学式へと連行されてしまう。しょうもない理由とはいえ、入学式を拒む新一年生は僕くらいだろう。 式に出席するという選択肢は忘れてしまった。   見慣れない、人気のない校舎。 入学式出席を辞退した僕。 肌寒い、四月。   そんな僕が思いついたことといえば、屋上に向かい、この私立高校の校舎と屋上から見える景色を新一年生の誰よりも早く眺めてみたいという純粋な気持ちからくる案。この案はつい一週間前に引っ越してきたことに起因してもおかしくないと思う。うん、絶対におかしくない。   校舎の地理が分からなくても、テキトーに階段を上れば屋上に到達出来る。   屋上とは不思議と、上にあるものなのだ。
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