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学校が終わり家に帰るとすぐに ランドセルを玄関に置き飛び出した
「コラッ 太一! 待ちなさい!」
姉が呼ぶ声を背中に受けながらも 僕は八百屋へとかけていった
わが家は父と姉と僕の3人暮し
母親は2年前に近くの八百屋に玉ねぎを買いに出かけたまま まだ帰らない
当時まだ小さかった僕は
(きっと佐藤さん家の犬が怖くて 遠回りしたら迷子になったんだ)
と真剣に考えていた
僕が実際に経験していたからだ
今では違うのはわかっているのに 2年前から始めた八百屋通いは止められない
「おう 太一 また来たか 何かいるものあるか?」
すっかり顔なじみになった八百屋のおじさんにそう声かけられたが 僕は首を横に振った
僕は買い物に来たわけじゃない
「いらっしゃい 太一君」
いきなり後ろから女の子の声がした
この声は八百屋の娘 琴美ちゃんだ
母親を探しに来ていた八百屋なのに 僕はいつしか彼女に会いに来ていたのだ
「そうそう太一君 私知らなかったんだけど 私達 お母さんが同じなのね」
いきなり彼女がそう言った
「えっ!?」
突然のことで僕は意味がわからなかった
(もしかして新手の告白? しかもいきなり結婚?
まだ心の準備が・・)
などと勝手な妄想を膨らませていると
「お母さん」と彼女が呼んだ
僕は将来の母親を見ようと振り返ると そこにいたのは出ていった母親だった
母親には二つの家庭があったのだ
「太一・・」
そう言って立ち止まった母親の胸に飛び込んで 僕は泣いた
母親を両手で叩きながら泣いた
「お母さん・・どうしてだよ
どうして・・」
散々泣いて最後に僕は言ったんだ
「あんたなんか僕のお母さんじゃない
だって・・だって・・
琴美ちゃんと結婚出来ないじゃないか!」
おわり
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