”帰り道”

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  職場からの帰り道   私は街の雑踏をかきわけ歩いていた     路上でいちゃつくカップル   酔っ払ったおやじ   騒ぎ立てる若者たち     目に映るものはろくなものがない       こんなところ早く通り過ぎてしまおうと 足早に歩いていると   「あのっ」   と急に声をかけられた     振り返るとそこには気の弱そうな男性が こちらを見て立っていた     「何か?」   と私が聞くと 男性はうつむいて何も話さない     用がないならと振り返り 歩きだそうとすると   「あのっ」   と男性に再び呼び止められた     「もう!なにか用!?」   少し怒るように私が言うと 男性は尻込みながらも口を開いた       「あのー 僕のこと覚えてませんか?」   「えっ!?」     男性のその言葉に 私は頭をフル回転した     誰? こんな人知らない   会社にはいないし 友達の彼氏? なわけないか   あっ もしかして同級生?     いろんな人が頭を廻ったが 結局誰なのかわからない     仕方なく私は   「ごめんなさい・・覚えてないわけじゃないんだけど・・」   と少し曖昧にごまかした       すると男性は   「そうですか・・」   ただそう言って うつむいたまま去ろうとした     その後ろ姿に私は思わず   「ちょっと!」   と男性を呼び止めた   男性が誰なのか気になったのだ     男性は振り返り   「何か?」   と返事をした     それは私の台詞よ!   と思いながらも 私は聞いた     「あなたは誰?」   すると男性はこう言った       「田中です あなたとは毎日のように会ってますよ」   田中・・?   尚も私が首を傾げていると       「駅前のセブンイレブンの店員です   今朝もあなたは買い物に来ましたよね?   ずっと気になってたんです」   と男性は言った       私は呆れはてて 男性にこう告げた       「私はローソン派です」       おわり  
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