”マラソン”

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  ここは国立競技場   今日は国際マラソンが行われている   溢れる程の人が選手の帰ってくるのを 今か今かと待っていた       そこへ僕が誰よりも早く入って行くと 割れんばかりの歓声が沸き起こった     なんて気持ちがいいのだろう     僕は笑顔で手を振りながらトラックを走った     最高だ!   こんなのは生まれて初めての経験だった       しかしそんな感動に酔いしれていられるのは 一瞬だった   後ろから足音が近付いてきたのだ     ヤバイ!!     二人の人間がすぐそこまで迫っていた   僕は必死に走った     なんとか逃げきらなきゃ   僕の夢が終わってしまう       今にも爆発しそうなほど 心臓がバクバクしている   苦しい・・   でも僕は走った   歯を食いしばって走った       しかし神は僕の味方をしてはくれなかった   足がもつれ前のめりになり 転んでしまったのだ     「ちくしょー!!」   僕は地面を叩き 悲鳴にも似た声をあげた     一人悔しがっていると   「さあ 立って」   そういって後ろから来ていた二人が 倒れている僕を立たせてくれた     客席からは一斉に拍手が沸き起こり 歓声が上がった     僕は二人に両脇を抱えられ 足を引きずりながら歩いた     「名前は?」   そう聞かれたが僕は答えられなかった   目から溢れでる涙を止められなかったのだ     いつまでも泣いている僕を見かねて 一人がこう言った       「泣くのは後にするんだ       これから取り調べをするから!!   まったく人騒がせな奴だよ   選手のふりをするなんて」         おわり  
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