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全身を撃ち抜かれたような衝撃が走った。
騒がしく人々が行き交う中、間嶋充生の胸元がみるみる赤く染まり、焼けるような挽肉が地肌を流れ落ちていく。
「うあちっ。あちちちち」
「間嶋クン、ちっとも変わってないね。くす」
奇妙な友人を持った宿命とでも言おうか、些細なサプライズには動じないと自負していた間嶋であったが、この時ばかりは神の与え給うた偶然の出会いに驚かされずにはいられなかった。
大仰なようだが、これは誇張ではない。少なくとも彼にとっては。
「あ、ああああ。そんな、悪いよ」
「いいわよ、ハンカチの一枚や二枚。それより今すぐこれ何とかしないと染みになっちゃうわよ」
伏し目がちに目くばせをすると、彼女は間嶋の胸元にだらしなくこぼれたミートソースを丁寧に拭き取っていった。
目の前に落ちた艶のある黒髪が、さらりと揺れる度に間嶋の鼻孔をくすぐった。全身が、まるで金縛りにあったように硬直していく。身じろぎ一つできない。
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