ストレート直球告白

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兄貴の声に我に戻った俺は、 適当に服を着て、 食卓へと足を運んだ。 ―食卓― 「ピラフあるし、作って食べよっか」 「うん。じゃー、 俺ピラフ作るから兄貴は、 適当に机拭いたり食器用意しといて」 「分かった」 「兄貴、そこの ピラフとバター取って」 「ハイッ」 兄貴がピラフとバターを差し出した。 俺はフライパンを 温めながら、手を伸していた。 そのせいか、中々兄貴の 手に自分の手が向かわなかった。 「ホラッ、森。 ちゃんと、こっち向いて取れよ」 そう言いながら、 兄貴が俺の手の平に ピラフとバターをのせた時だった。 兄貴の指と俺の手の平が微かに触れた。 すると、俺の手は 無意識の内に兄貴の指から、 逃れるかのように、引っ込めていた。 「……森?どしたの?」 「いや、別に……。何でも、ない」 「そう?」 「うん」 そう言いながら、 足元に落としてしまった ピラフとバターを拾った。 「作ってくる」 そう言い残して、 何かから逃げるように キッチンの方へと急いだ。 そして、フライパンの上で ほんのりといい香りを 漂わせるピラフが出来た。 すると、ちょうど ピラフを載せる皿を 兄貴が取りにきていた。 「森、ちょっとゴメン。 通りたいから、 寄ってもらっていい?」 「いいけど……」 そう言うと、俺の後ろに 兄貴が回って食器棚で、 皿を探している。 「森、どんなのがいい?」 「どんなんでも、いいよ」 「それは困る。 森って、そういうこと 言っても、結局あとで ケチ付けるんだからさぁ」 「……」 兄貴が話す度に、 俺の鼓動が早まっていく。 どんどんどんどん、早まっていく。 早く、この時間が終われば……。 「じゃー、これでいい?」 そう言って、兄貴の 差し出した皿を受け取り、 ピラフを盛っていった。 「じゃー、俺は席で待ってるな」 兄貴は先に、食卓へと 向かっていった。 すると、さっきまで 止まなかった胸の鼓動は止んでいた。 そのかわりに、 違う感覚が体に走った。 胸の奥が刺されているかのように、 苦しみと痛みがいっぺんに 俺の体全身へと、伝わってくる。 そんなことを考えていると、 兄貴がキッチンに来ていた。 「何やってんだよ?冷めるだろ?」 「あっ、悪ぃ」 そう言って、お互いに 自分の皿を食卓へと持っていった。 「じゃっ、食べよっか」 「うん」 「いただきまーす」
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