ストレート直球告白

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「いただきます」 蟠りを残したまま、 ピラフを口へと運んでいく。 目の前では、兄貴がゆっくりと ピラフを口へ運んでいた。 「……」 すると、俺の視線に気付いたのか 兄貴が顔が上げた。 「……何?何かついてる?」 「っ別に。何も……」 そう言って、ピラフを おもいっきり口にほうばった。 分からない感情と 分からない自分の気持ち。 まるで、大きな街に まだ見たことのない風景に ただ、不安を募らせて 怯えている少年のようだった。 行き場のない気持ちは、 どうすればいいのか。 この苦しくて痛い感情は何なのか。 ……ただ、ただ、 分からないままだった。 すでに― 決まっていたんだ。 ……俺の未来は。 あの時に一歩踏み出す 勇気がなかったから。 気付かなかったんじゃない。 気付くのが怖かった。 今までの現実が、現実じゃなくて、 自分の夢になりそうで。 悔やめば悔やむほど、辛くなる。 一度壊れた物は元に戻らない。 それと同じだった。 俺が起こした過ちは― 「食べ終わったなら洗いに行けよ?」 「へっ?あっ、分かってるよ」 そう言って、自分の 気持ちがバレないように キッチンへと走っていた。 「何だよっ、この痛み……」 行き場のない気持ちを、兄貴に 分からないように小さく漏らして、 頭から書き消すかのように 目の前の皿を無言で洗っていた。 そして、皿を洗い終わってから 食卓を通り過ぎようとした時だった。 「森?どこ行くんだよ?」 兄貴の呼び掛けとともに、こう言った。 「部屋」 そう言って、足早に 階段を上がり部屋に戻った。 部屋に戻って、 自分のベッドの中へ潜り込んだ。 布団の中では、上がり続ける体温を 必死に下げようとしていた。 すると、ドアが開く音がした。 兄貴が部屋に入ってきた。 「森?調子悪いのか?」 「……別に。しんどくねぇよ」 「じゃー、どうしたんだよ」 兄貴がベッドに寄って来る。 布団に手を掛けたのが 直に伝わってくる。 「……」 「めくっていい?」 「……無理」 「何で?」 「無理だから」 「……」 バサッ、チラッ、 「森?暑い?顔真っ赤だよ」 「暑くねぇよ。 つーか、布団めくんなっつたろ」 「いいじゃん。 久々に兄弟で寝ようよ」 「はっ?意味分かんねぇよ。 ってか、勝手に入んな」 「いいじゃん。俺眠いし」 「意味分かんねぇよ」
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