ストレート直球告白

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「あっ、森。 肉焼けたから、食べる?」 「食う」 そう言って、席に着いた。 「いただきます」 「いただきます……」 自然と沈黙が続く。 俺の勘違いもしれないけど、 おふくろ達がいないから? いや、違う。 普段、おふくろ達がいなくても 兄貴と会話は交わしていた。 第一、兄貴が過保護だから 会話がない方がおかしい。 そう考えると、互いに 相手を気にしてるから? ……ないか。 兄貴がそんなわけないし、 俺だってないし……。 「森?どうした?」 「何が?」 「ずっと、黙ってたから」 「あっ、そう? 食欲ねぇから、もういいや」 「分かったって言っても、 森の皿空っぽじゃん」 「……ごちそうさま」 「どこ行くんだよ?」 「風呂」 そう言って、俺は逃げるようにして 風呂場へと急いだ。 「……どうしたんだろ?俺」 身に覚えのない蟠りが心を支配する。 どうしたら、この気持ちは 消えるのだろうか? 消えたら、俺はどうなる? 元に戻れる?それとも……。 この時にすでに― 俺の心は奪われていた。 歯車が回ったときに、 俺の心も動かされていたんだ。 優しい君の大きな 温かいその手によって。 人は流されていくうちに 大切なものを失っていく。 でも、そのことには気付かない。 時が過ぎると、想いは 褪せていくものなのか? 君に抱いた俺の気持ちも 少しずつ褪せていくのかな― そんなことを考えていると、 兄貴が外から、 呼ぶ声が聞こえてきた。 「いつまで入ってんだよ? もう30分経つぞ」 「分かったよ。 上がるから、出て行けよ」 「上がったら、声掛けろよ」 兄貴が出て行ったのを確認して 俺は急いで着替えた。 そして、風呂場から 上がった俺は兄貴と目が合った。 「……」 「声掛けろって、言っただろ?」 「見りゃ分かるじゃん」 「そうだけど……。温かかった?」 「まぁ。じゃ、俺部屋戻るから」 そう言い残して、 階段を上がっていった。 部屋に戻って気が付く。 よく考えたら、 兄貴と同じ部屋だったんだ。 2人きり……。 いつもなら、 対して困ることでもない。 でも、今は……。 避けたい気持ちも少しはある。 3日間……。 無事に過ごせる自信が正直ない。 でも、どうしようもないことだし。 「寝よ……」 「気持ち良かった。森、寝た?」 「……」 「寝てるか。……おやすみ」 「……」 これでいいんだ。 ……これで。
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