🆕 桜扇 雷吾《オウセン ライゴ》

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『さて、では行きましょうか』 さりげなく私の鞄を持ち、歩き出す。 『あ、ちょ、こら雷吾』 急いで呼び止める。 振り返り 『どうしました?』 抗議がしにくい爽やかな笑顔だ。 『だから、鞄は自分で持つって言ってるだろ』 奪い返そうとすると、ヒョイっと鞄は持ち上げられ、私の手は空振った。 『はい、向日葵が言った事は、一言一句漏らさず覚えてますよ』 さりげなく怖い台詞が聞こえた。 『う…、それはそれで嫌だな』 『とりあえず返せよ、鞄』 『嫌です』 恐ろしく早い返答だった。 『なんでだよ』 『嫌だからです』 これも、恐ろしく早い返答だった。 『ぐ…』 言葉に詰まっていると 『とにかく無駄ですから、さっさと教室行きましょう』 爽やかな…いや腹黒い笑いをたたえ、歩いていった。 今日もまた持ってかれた。 .
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