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『何者って何がだよ?』
…ふむ、なら単刀直入に聞く。
『ある程度の動きに型がある。しかし力は無い、さらに魔法を見ても驚きもせずに…しかも恐怖することなく剣を握った。』
説明してもらう。
これだけの状況を一般の人間が対応できる筈がない。魔法に通じるものならば辻褄はあう、しかしあの状況で魔力を発動させなかった。それに…こいつからは魔力なんぞ感じはしない。
『なるほどな…そうだな、確かに魔法が存在する事については驚いた。だがあの状況に似た様な場面には遭遇した事は少なくはない。多分だ、体がまだ覚えていたんだろう、生き残るため、守るための立ち回りかた、チャンスへの嗅覚。型の方は…まぁ…軍人に連れがいる。そっちに鍛えてもらっているんだ。』
納得しきれてはいないが…それも辻褄があう。だが今回は運がよかった。
『もう1つだけ聞く、貴様は戦う力を持つ者か?持たぬ者か?』
男は考え…そして答える。
『残念ながら後者だ。今回はあんたが言うように本当に運がよかった。実際の俺はあんな奴が相手じゃ盾にもなれはしないただの荷物さ。』
ほう?
『ならなぜ飛び込んだ?』
『人を助けるのに理由はいるか?生憎だが俺は無視できるほど人間できちゃいないんでな。』
人間か…人間らしい…下らないが…こいつは俺が見た人間だ。
『悪い事は言わない、この先この事件には関わらない事だ。』
忠告はした、後は貴様次第だ。
踵を返し探索に戻る。
あいつはまだ俺を見ていた。
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