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「ありがと」
短くお礼を言って少年の衣服をめくる
「肋骨は……折れてないな。頭も見ため程ひどくないし」
俺はそう判断し、少女に尋ねる
「ここの辺で包帯と傷薬を売ってるところに案内してくれないか?君のお兄さんの治療がしたい」
「……お兄ちゃんをいじめない?」
あぁ、と頷いてやると少女はこっち!といいながら走りだした
俺も駆け足でその後についていき路地裏を抜ける
少女の姿を見失わないようにしながら人込みを掻き分けて走る
「ここ!」
やがて少女は一つの店の前で止まり、指差した
「ありがとう、ちょっと待っててくれな?」
少女が頷いてから店の中に入る
「おや、いらっしゃい!」
すると人当たりがよさそうなおばさんが俺に気付き、挨拶をしてきた
「包帯と傷薬を売ってほしいんだちょっと訳ありでね」
苦笑いしながら言うとおばさんは店の外にいる少女に気が付いて眉をひそめた
「あの兄妹の事かい?だったら悪い事は言わないからほっときなさい。あの兄妹は――」
「盗みの常習犯…だろ?わかってるさ。だが、だからと言ってほっとく訳にはいかないさね」
おばさんから袋を受け取り再び苦笑いを浮かべてお金を払う
「あの兄妹はいい子だよ。ただ生きるための方法がそれしかなかっただけだ。そこだけはわかってほしい」
そう言って一礼をすると俺は踵返して少女のもとに戻った
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