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「……これでよし!」
路地裏の少年の所に戻り、買ってきた包帯と傷薬で応急処置をたった今終えた
気が付けば太陽は沈みかけ辺りをオレンジ色に染めていた
「お兄ちゃんは大丈夫?」
「あぁ、しばらく安静にしてればすぐによくなるさ」
少女にそう答えると横たわっていた少年が小さく呻き声をあげ、ゆっくりと目蓋を開ける
「気が付いたみたいだな。どうだ?他に痛いところはあるか?」
「………うわぁぁぁぁあ!!!!」
俺の質問に少年はいまひとつ状況を理解してなさそうだったが完全に覚醒すると叫び声をあげて跳びずさった
「僕達に何のようだ!!僕達を殴りに来たのか!?」
少年はその年に似合わない程の眼光で俺を睨み付ける
そんな少年を見て俺は悲痛に表情が歪めるのを自覚した
いったいどれ程の事をされたらこんな少年になるのだろう
そんな想いを胸に俺は笑いながら少年に語り掛ける
「君を治療したんだよ。殴るつもりも危害を加えるつもりもない」
そう言いながら少年に一歩ずつ近づく
「嘘だ!そんな大人は一人もいなかった!!」
少年はそんな俺を拒絶するように叫んで地面に転がっていた手の平ぐらいの大きさの石を握り、投げ飛ばしてきた
普段ならば避けたり叩き落としたりしただろうが今日は何もせずにその石をわざと喰らう
額が裂け、鮮血が頬をつたって地面に落ちる
「うっ……!」
だが、俺は歩みを止めずに少年の前までたどり着き右手を上げた
「―――!!」
少年は殴られると思ったのか眼を強く瞑ってしまう
俺はそんな少年に苦笑いを浮かべ
「………えっ?」
やさしくその頭を撫でてあげた
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