2285人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫だ。他の大人はどうであれ俺は君達を殴るつもりはないよ」
「―――!うっ、くぅ!ああぁぁぁあああ!!!!」
俺が諭すように頭を撫でながら言うと少年は今まで蓄めてきたものを全て吐き出すように大きな声をあげながら泣きだした
「……ふぇ…」
すると少女の方もつられて顔を歪め涙を流しはじめる
俺はそんな少年と少女を引き寄せ、二人が落ち着くまで頭を撫で続けた
―――――――――――――――
「落ち着いたか?」
俺の質問に二人はこくり、と首を縦に振って答える
「そういえばまだ名前を言ってなかったな、俺は柊 史翔。」
「……ヒイラギ…シト?」
少年が復唱すると俺はあぁと言いながら頷く
「じゃあシト兄って呼んでもいい!?」
すると、横から尋ねてきた少女の問いに軽く戸惑いながらも頷いてやると二人はうれしそうに表情を明るくさせた
ようやく年相応になってきたな
「ところで君達の名前は?」
だがこれは地雷だったらしい
明るくなっていた表情は一変し二人とも顔を俯かせてしまう
「……僕達、名前がないんだ。気が付けばここで妹と一緒にいたから…」
「そっか……」
少年の言葉を聞き、額を押さえ空を仰ぐ
すでに太陽は完全に沈み、闇が空を覆っていた
「「「……………」」」
沈黙が3人を支配する
「………そうだ!」
だが、それは少女の明るい声によって一瞬で消し飛んでしまった
最初のコメントを投稿しよう!