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SIDE:少年
「走るよ!!」
僕は今日の成果を片手で抱えるようにしながら妹の手を引く
「ま、まってよ!」
妹が辛そうに声をあげているが止まる訳にはいかない
「このくそガキがぁぁあ!!!」
僕達は今追われているからだ
「今は我慢して!」
後ろから追い掛けてくる男はその手に棍棒のような物を持っており捕まればどんな仕打ちをされるかは大体見当がつく
だからこそ捕まる訳にはいかない
僕達の足が大人の男性に適う訳がない
だから、僕達は小さい身体を活かして狭い道や裏路地に入り込む
その後もグネグネと曲がりながら走り続け、いつもの場所に帰ってくる頃には追い掛けてきていた男の姿は影も形もなかった
「はぁ……はぁ……はぁ…」
荒れた息を吐きながら壁に寄り掛かって座り込む
横を見ると妹も辛そうに呼吸しているのが眼にはいった
「今日は……いつもよりしつこかったからね」
あそこの店はもうダメかもしれない
そんな風に考えながら僕は妹の頭をやさしく撫でた
ジャリ……
けれど、僕の考えは甘かった
「このガキ共か?」
僕は突然聞こえてきた声に驚愕して慌てて顔をあげる
そこには若い二人組が僕達を冷めた瞳でを見下ろしていた
「くっ!」
僕はその手に持っている物を見て妹の手を引いて逃げ出した
二人組の手には棍棒が握られていたからだ
だが…
「逃がさねぇよ」
そんな呟きの後、ゴッ!っという鈍い音と共に僕の頭部に衝撃が走り、壁に叩きつけられた
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