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血を垂らしたかの様に
紅い月が満ちる夜
静かに大胆に動きだす
闇の貴公子
乙女の月光に照らされる
白く柔らかい肌を求め
ひらりひらりと飛び回る
乙女は夢の中
そっとベッドの
脇に立ち腕で首を
支えて噛み付く…
じわりじわりと
口内に広がる
甘美な血の酒は
いつ飲んでも
飽きることはない
乙女は、目覚め
体を火照らせ
甘い吐息を吐き
快楽と恐怖が
入り交じる潤んだ瞳で
根源になる貴公子を
見つめる
まるで飴を欲しがる
子供のような訴える
視線に溺れる貴公子は
満足するまで血の酒を
飲み乙女の柔肌から牙を
抜き愛しく思うように
傷口に滲む
ルビーの様な血を舐め
闇に消えた
乙女は傷口を
押さえながら貴公子が去った窓を眺めた
紅い月は今宵も
魔物に微笑み
天の御使いに恐怖を与える
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