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俺がまだ小学4年生の頃のある夜の事・・・
その日は地方の花火大会があって俺は家族についてそこに来ていた。
久しぶりの祭りごとと周りにある露店で俺の気分も高まっていたのだろう。
俺は露店の金魚すくいに見とれている間に家族とはぐれてしまった。
周りを見ても知らない人ばかり、恐怖と不安が頭の中を駆け巡り俺は道の真ん中で途方に暮れていた。
道を行き交う人から
「じゃまだなぁー!」
「そんなとこに突っ立てんなよ!」
などの暴言を吐かれたが俺の耳には全く入ってこなかった。
俺は泣き叫ぶわけでもなく、探し回るでもなくただ途方に暮れていた。
低い視界から見る景色に絶望していた。
そんな俺の小さな背中を彼女は叩いたのだ。
「あなた“も”一人なんだ!
ねぇ・・・一緒に花火見ない?」
一人の少女が少しうれしそうに言う。
そのうれしそうな声に腹が立ち、「こんな時に誰だよ!」と文句を言ってやろうと思い、
振り返って口を開けるとその姿を見た瞬間、声が出なかった。
年は同じくらいだが、小学生の時の俺でもわかるほどの整った容姿で
赤い花柄の浴衣を纏ったその少女に俺は見とれてしまったのだ・・・
「ねぇ・・・ダメ?」
と上目遣いで聞いてきたせいで
俺はつい「うん・・・」と答えてしまった。
その答えを聞いた瞬間、
少女は俺の手を思いっきり引っ張ってどこかに連れて行く。
文句を言おうと思ったのに「うん・・・」と答えてしまった自分が情けなくて引っ張られている最中俺はずっと俯いていた。
彼女の足がふと止まり、
俺が顔を上げるとそこは俺がいつも花火大会の時にくるような大勢の人が集まる所ではなく、人気のない河川敷だった。
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