第二十三章~願望~

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本当ならば、引き止めたい―― 今すぐにでも、追いかけたい…。 だが、博美から言われた一言が――奈央子の足を止めていた。 《同情》 ――そう、もしかしたら同情かもしれない。 彼に行ってほしくない気持ちは “たんに自分が、寂しくなってしまうから” “孤独になってしまうから” ――只、それだけの理由かもしれない。 そんな気持ちで彼を追い掛ける事など……出来なかった。 「行かないで、なんて……言えないょ…」 彼女の呟いた声は、周りの雑踏に掻き消され――聞こえる事は、なかった。
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