第二十四章~別れ~

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部屋の中には、彼の持ち物はない。窓際に干してあった洗濯物も、綺麗さっぱりなくなっている。 「…………」 静まり返っている一室――。 今までだったら、そんな寂しさなんてなかったのに…。 彼がいるだけで、毎日がうるさいくらいに騒がしくて――そんな当たり前の事が、自分にとってどれ程の心の支えになっていたのか……奈央子は、改めて気付かされた。 「…黒沢君?」 返ってくる返事はない。 「…………」 自分の何気ない一言が、彼の心を傷付けてしまった。 ポストの中に投げ込まれていた、銀色の合鍵。 静まり返った部屋の中で、奈央子は深く…後悔した。
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